農業のはじまり

ここでは、人類が農業を始めた時代について説明します。

人間はもともと狩猟・採集生活をしていた

人類は誕生してから長いこと、野菜や木の実を採集したり、動物や魚を獲って生きていました。そこから安定した食料供給のため、いつからか農作物を栽培し、家畜を飼育し始める生活様式に移行しました。最初に農業が始まったのがいつだったのか、はっきりとはわかっていません。最古の農業の痕跡としては、2万3000年前のイスラエルから複数の穀物を栽培した跡が見つかっています。

その後の時代にも、シリア、エジプト、中国、アフリカ、南北アメリカなど世界中で植物の栽培、収穫した痕跡が発見されています。本格的な農耕が始まったのは紀元前7000年のエジプトとされています。この頃には人間は豚やヤギなどの動物を家畜として飼育し始めました。その1000年後には牛が家畜化されました。

農業が人間に与えた変化

狩猟・採集時代の人間は、基本的に一ヵ所には定住しない遊牧民でした。季節の移り変わりによって違う植物が実をつけたり、魚や動物が移動したりするのに合わせて、人間も移動していたのです。そのため、持ち物も最小限であり、一つのコミュニティの人数も比較的小さいものでした。

しかし、農業が確立して安定した食料供給が実現すると、人間は一つの場所に定住し始めました。そして「家」ができ、他人と自分の区別はより強まりました。大量にできた穀物などを保存するようになると「財産」という概念ができ、財産はまた新たな戦いの火種ともなっていったのです。